自粛生活のお仕事は読書

f:id:purpleprincess3:20200531105819p:plain

 

自粛生活休業中に、何かできることはないかと考えた。
本棚を整理して見つけたのは、20年前にお給料日ごとに1冊ずつ買いそろえていた瀬戸内寂聴さんの『源氏物語』10巻。いつか時間ができたら、と思ってしまっていたんだけど、今読まずにいつ読む!と、決心して読み始めることに。
Facebookに、あらすじを掲載し始めたら意外と反響があり(喜!)、Facebookをやらない友人からのリクエストで、こちらにブログを開設した。

Yちゃん、あなたのためのブログだよ!どうぞ、読んでくださいね。

[完]源氏物語 巻十

f:id:purpleprincess3:20200614130121j:plain

源氏物語巻10


『浮舟』の帖は、薫と匂宮の二人から愛されて板挟みになり、悩み苦しむ浮舟を描く。匂宮はいつまでも、思いを遂げられなかった浮舟を忘れられない。中の君にまで、隠したのだろうと恨み言をいう。中の君は薫と妹の浮舟のことは知らせず、自分の胸に畳み込む。薫は浮舟を匿う宇治を、しばらくは人に秘密の隠れ家にしようと考え、三条の宮近くに移す算段をする。あるとき、浮舟が中の君あてに送った手紙を匂宮が見つけてしまう。「宇治に薫の君が通っているのは、こういう女を隠していたから」と、気づく。いてもたってもいられなくなった匂宮は「いつか二条の院で見た女かどうかを見定めたい」と、思いつめるように。薫との共通の職場の仲間、内記というものに相談して宇治へと向かい、覗き見する。「中の君とよくまあ感じが似ている」と思い、会いたいと熱望していた人を目の前にして、薫のふりをして浮舟に近づき、思いを遂げる。浮舟は匂宮だと気づき、中の君のことも考えると、とめどなく泣くばかり(ひどすぎる!!!!)。匂宮もこれから簡単に通うことができないことに及んで、やはり泣く(自分のしたことなのに!!)。そして一晩泊まり、翌日もまた二人で過ごし、お互い強く惹かれ合い恋に落ちる。匂宮もまた、「ここから連れ出して、他所へ移してしまおう」と考える。中の君と若君の待つ二条の院に戻った匂宮は、悩みに沈んで病の床につく。翌月、薫がひそかに宇治へと向かうが、浮舟は「思いもかけず匂宮に惹かれた恋心を薫に知られたらただ事ではすまない」と思い乱れる。男は亡き大君を思いだし、女は辛く苦しい運命を嘆きながら、お互いの物思いに沈む。

病が回復した匂宮は、「呆れるほど無理な算段をして」宇治へ出かける。浮舟をいきなり抱き抱え小舟の乗り込み、小さな家へ連れて行き、二人きりで二日間思うさま愛し合う。二条の院に戻った匂宮はまた、体調を崩し痩せていく。

薫は新築の家のことを、あの内記の親戚に命じたことから、匂宮に知られてしまう。焦った匂宮はすぐに違う場所に浮舟を移そうと計画を始める。浮舟は双方からの誘いに、気持ちがゆれ「死んでしまおう。いつかはきっと世間に顔向けできないことが起こる」と考えるように。手紙のやりとりに感づき、薫は匂宮と浮舟の関係を知る。そして、浮舟に自分は気づいていると、それとなく手紙で知らせ、宇治の山荘の警護を厳重にして、他の男を近づかないようにする。手紙も届けられないくらいの厳重さに、匂宮は宇治を訪ねるが、浮舟に会うことなく京に帰る。匂宮、薫のどちらもが、浮舟を京に移したいと、支度を急いでいる。薫には恩があり、誠意ある態度は好ましい。だが、匂宮への恋心は募る。中の君への手前、薫との縁を大切に思う母への気持ち、宇治川へ身を投げるしかないと浮舟は追い詰められていく。

『蜻蛉』(かげろう)のように消えてしまった浮舟に、残された薫と匂宮をはじめとする、様々な人間模様を描いた帖。翌朝、浮舟がいないのに気づいた宇治の山荘の大騒ぎから始まる。胸騒ぎした京の母から2度にわたる手紙が届いていたが、匂宮との秘密を知る右近や侍従は「宇治川に身を投げた」と推量するが、そのほかの女房たちも右往左往するだけ。事情を知ろうと匂宮の使いが駆けつけるが、はっきりとした内容は知らせない。京から慌てて駆けつけた母君にはありのままを知らせ、ごく内密に葬儀を済ませる。薫はちょうどお母様の病気の祈願の最中で、その事件のことを知らず、宇治に駆けつけることができず、ただ勤行に励む。匂宮は正気もないぐらいに嘆き、悲嘆にくれている。そこで薫は匂宮をお見舞いして、ふたりのただならない関係に気づき「気づかない自分を、さぞ間抜けな男だと」物笑いにしていたはずと勘ぐる。中の君は、宇治での出来事はすべて承知で、姉の大君、妹の浮舟、どちらもあまりにもはかないと嘆き、心細く思う。匂宮は浮舟に仕えていた侍従を呼びよせ、浮舟が身投げしたときの子細を語らせる。薫は宇治に右近を訪ね、真相を知る。また浮舟の母にも気配りして、浮舟の別腹の幼い弟たちが朝廷に仕える時には後ろ盾になると伝える。四十九日の法事は、格別に立派に済ませる。

悲しみにくれていたはずの男たちは、少しずつ変化を見せ始める。匂宮はおそばの女房たちに気を紛らせることが多くなる。また、薫は北の方の姉女一の宮を覗き見して、この人と結婚したかったと思い、北の方である二の宮に一の宮が着ていた衣装と似たものに着替えさせ、同じような仕草をさせて楽しむ。また、一の宮との繋がりを持ちたいと、二の宮に手紙を書かせるなどする(ああ、浮舟への想いはどこへ)。宮の君という女性を巡っての薫と匂宮の鞘当ても語られて、なんとも呆れた展開となる。

『手習』の帖は、身投げした浮舟が比叡山の横川の僧都に助けられ、出家するまでを描く。僧都には80歳あまりの母と50歳ほどの妹がいて、一緒に初瀬詣に行った時に、母尼が体調を崩し、宇治の院で休むことに。そこで、身投げに失敗した浮舟が激しく泣いているのに出会う。娘を亡くした妹は、「恋悲しんでいる娘が帰ってきた」ように思い、世話をする。「誰にも逢わせないで、この川に投げ込んでください」と言ったきり、浮舟は全くものを言わずに、ぐったりしたまま。僧都は祈祷をして物の怪を憑座に乗り移らせ、退散させた。浮舟は意識が戻るが、記憶喪失で、自分の名前も思い出せない。妹の尼も、そばにいる女房も、死なせるのが惜しい美しい器量なので、大切に看病する。少しずつ回復し、記憶も徐々に取り戻す。妹の尼の娘であった姫君には今は中将になった婿がいて、あるとき訪ねてきた。たまたま浮舟の後ろ姿を垣間見て、興味を持ち始める。浮舟は「どんなことがあっても結婚だけはしたくない。男女の関係は忘れてしまおう」と、決意しているので、相手にしない。秋、尼君が初瀬詣に浮舟を誘うが、同行を断る。人の少なくなった庵に中将が訪ねて来るが、遅れた浮舟は決して会おうとしない。その翌朝、僧都が突然山を降りて来る。「どうか尼にしてください」と懇願して、尼君のいない間に髪を下ろし、出家を済ましてしまう。俗世に暮らさなくてよくなって、浮舟だけが晴々と嬉しい気持ちになる。初瀬詣から戻った尼君は、ことの次第に嘆き惑う。

一方、京で中宮との繋がりの深い僧都は、宮に宇治でであった姫(浮舟)のことをあれこれと話す。中宮はあの宇治のあたりで姿を消した女ではないかと思い出す。そして薫の耳にも届き、あるとき浮舟の弟を連れて横川へ訪ねる。

『夢浮橋』の帖は、薫が親交を深めていた僧都から浮舟のその後の仔細を聞くところから始まる。「死んでしまったと諦めていた人が、生きていたのかと、思いがけず呆然として、涙ぐむ」薫の姿に、僧都は浮舟の出家を助けたことを悔やむ。いきなり自分で訪ねていくことを憚り、弟に手紙を持たせて浮舟の様子を伺うが、「母君一人にはお会いしたい」が、薫には知って欲しくないと、弟と会うことも拒む。薫は「誰か男が隠し住まわせているのか」と想像をめぐらせる。

薫28歳、「源氏物語」54帖はここで幕となる。

なんとも呆気ない終幕だけど。。。

 

源氏物語 巻九

f:id:purpleprincess3:20200614130713j:plain


 

『早蕨』の帖は、姉の大君を亡くした中の君がひとり寂しく暮らす宇治の邸から始まる。匂宮は京に中の宮を迎える決心をして、薫は引越しの世話をする。とはいえ、亡くなった大君が自分と中の君との結婚を望んでいたことを思うと、後悔の思いもある。柏木の乳母だった女房、弁は尼となり、宇治の邸に残ることになる。匂宮の待つ二条の院は、理想的な住まいに整えられ、薫も二条の院近くの三条の宮に引っ越す。

『宿木』の帖。帝に寵愛されていた藤壺の女御のひとり娘、女二の宮はたいそう美しい。この姫の行末を案じた帝は薫を婿にしたいと話を進めているが、薫は光栄とは思いつつも、大君を忘れられず乗り気ではない。一方、夕霧の右大臣は、帝と明石の中宮の間に生まれた六の宮を匂宮にと考えている。匂宮は中の君に夢中でこちらもあまり乗り気ではない。しかし、薫も匂宮も断りきれず、それぞれ結婚の話が進む。中の君は、匂宮が六の君と婚約したことを知り、京都へと住まいを移したことを後悔するが、すでに妊娠していた。匂宮と六の君の婚礼は着々と進められ、その日取りも知らせてくれないことに憂鬱がます。薫はそんな中の君に同情し、匂宮に中の君を取り持ったことを、また後悔する。中の君は懐かしい宇治へひそかに連れて行って欲しいと薫に頼むが、そのまま宇治で暮らしたいという望みを感じとり、とんでもないことと断る。六の君と結婚した匂宮は、思いの外魅力的な姫に惹かれていく。帝の娘でもある六の君と結婚した手前、次第に中の君のもとへ出かけることも間遠になる。嘆く中の君はますます宇治へ帰りたい思いが募り、薫に「父八の宮の法事のお礼を直々にしたい」と手紙を出す。ところが、神妙に訪れたはずの薫は御簾の中へ入って来てしまう。が、抵抗にあって思いを遂げることはない。翌日久しぶりに中の君のもとへ訪れた匂宮は薫の移り香に気づき、気持ちがおさまらずに数日泊まり込む。薫はそれを知って嫉妬するが、衣類を届けるなど後見役らしい振る舞いもしながら、恋情を綴った手紙も出す。(ややこしい。。。)中の君はあるとき「不思議なほど亡き大君にそっくり」な、八の宮の形見の姫の存在を薫に告げる。宇治の山荘を訪ねた薫は、そこで弁の尼から、その形見の姫が20歳ほどになり可愛らしく育っていることを聞く。興味を持った薫は機会があれば会いたいと告げる。年が明けて、中の君は男の子を産む。一方、女二の宮は裳着の式(成人式)を終え、翌日薫は婿として御所に参上する。宮中に通うという暮らしに馴染めず、三条の自分の邸に女二の宮を迎えることに。「女二の宮はお美しく、華奢で気品高く、自分はなんといういい星のもとに生まれついているのだろう」とありがたく思いながらも、いまだ亡くなった大君のことが忘れられない(なんてやつだ!)。たまたま出かけた宇治の山荘で、初瀬詣での帰りの、薫は八の宮の形見の浮舟を垣間見ることになる。大君の面影があり、声や気配は中の君にも似て、限りなくいとおしく思う。

『東屋』の帖では、薫が浮舟を宇治へと連れ去るまでを描く。薫は浮舟に惹かれながらも、自分からは手紙を出さず、弁の尼から常陸の守の北の方に思いをそれとなく伝えてもらう。北の方は他の姫とはまるで違う美しさと品のよさを備えた浮舟に良い縁をと願っている。浮舟に懸想文を送る中に左近の少将というのがいて、なかなかしっかりした人だと北の方は思い、二人の仲を進めたが、浮舟が連子だと知ると掌を返す。常陸の守の財力をあてにしていた左近の少将は、連子ではなくまだ少女の妹と縁組する。それと知らなかった北の方は驚き、浮舟をしばらく預かって欲しいと、中の君に申し出る。中の君は躊躇いながらも、二条の院の人目のつかない部屋で匿うことに。付き添って二条の院に滞在していた北の方は匂宮の従者として左近の少将を見つけ、立派な匂宮に比べ見劣りする少将の姿に大切な浮舟の婿にこんな男を望んでいたのかと恥じる。また、薫も垣間見て、立派で美しい姿に驚き、中の宮に浮舟との仲立ちを頼む。ある日、匂宮が二条の院を訪ねたとき、浮舟に目を止めることに。「どうやら新参の女房で、なかなか美しい女のようだ」と、好色な匂宮は自分のものにしようとした。おそばにいた乳母が匂宮を睨みつけてなんとか防いだ。中の君は子細を聞くが「いつもの情けないお振舞い」と、浮舟をかわいそうに思って、何も知らないふりをして部屋に呼んで慰める。間近で浮舟をみた中の君は「大君にそっくり」と、その顔をじっと見つめて、亡くなった姉を思って涙ぐむ。ことの次第を知った北の方は驚き、浮舟を隠れ家に移す。

宇治の御堂が完成したと聞き、薫は視察に出かけ、弁の尼に浮舟の隠れ家に自分の手紙を持って行って欲しいと頼む。弁の尼が隠れ家に到着して浮舟と話していたところ、突然薫が来訪する。姫を抱き上げ、車に乗せ、宇治へと向かう。

 

源氏物語 巻八

f:id:purpleprincess3:20200614130922j:plain


『竹河』の帖は、亡くなった髭黒の大臣の一家の物語。髭黒の大臣の未亡人となった玉鬘は3人の息子と2人の姫を育てている。長女の大君は帝と冷泉院のどちらからも所望されていて、夕霧の息子の蔵人の少将もご執心だ。しかし、息子たちの友人として遊びに来る薫を、婿にしたいと思っている。三月、大君と中の君、二人の姫が碁をうつ姿を蔵人の少将が覗き見して、美しい大君にますます恋心を掻き立てられる。だが、大君はたっての申し出もあり冷泉院に嫁ぐ。蔵人の少将は嘆き悲しむ。冷泉院に上った大君は寵愛され、姫に続き男君を産むが、院には秋好む中宮や弘徽殿の女御などが先にいて、大君の苦労は絶えない。薫23歳ごろまで。

『橋姫』の帖。同じ頃、須磨から源氏が復帰後、不遇の日を送っていた源氏と異腹の弟君、八の宮は宇治で暮らしていた。宮の北の方は可愛らしい姫を二人産んで先に亡くなる。姉の大君は奥ゆかしく高貴なお姿で、妹君の中の宮は空恐ろしいほど美しく育つ。もともと出家を願っていた八の宮は明け暮れ勤行に励み、近所に住む阿闍梨に経典を学びながら姫二人を育てる。この阿闍梨は冷泉院にもお経を教える人で、八の宮の噂が薫の耳にも届く。薫は八の宮にぜひ一度会いたいと手紙を託し、やりとりが始まり、宇治へと出かけ、経典の学びを通して交流が深まっていく。あるとき、姫君たちの音楽に誘われて、そば近くへ来たときお顔を垣間見る。そのとき薫の応対に出た年寄りの女房が、実は柏木の乳母だった。その女房から薫は自分の出生の秘密を知ることとなるが、母宮、女三の尼宮には自分がそれを知ったことを打ち明けることができない。一方、八の宮に二人の姫の行末を案じていることを告げられた薫は、「命ある限り姫たちのお世話をします」と後見役になることを誓う。薫20歳から22歳ごろ。

『椎本(しいがもと)』の帖では、かねがね姫たちの噂を聞き及んでいた匂宮が薫と一緒に宇治のお屋敷近くに逗留する。八の宮は薫を招き、匂宮は姫と手紙をかわすようになる。その後しばらくぶりに訪ねた薫に「死後は姫たちの面倒を見て欲しい」と八の宮は重ねて託す。「世間の男にありがちな露骨な恋心を見せない」薫の出す手紙に、姫君たちは時たま返事を書く。秋が深まり死の予感を持ちながら八の宮は勤行のため山寺に入り、姫のもとに帰ることなく亡くなる。姫たちの嘆きは言うに及ばず、薫もまさか本当に亡くなるとは思っていなかったため、残念な気持ちがこの上もない。喪が開けて見舞いにきた薫に言葉少なに姉の大君が応対をするがその奥ゆかしさに改めて心を捉えられる。女房が薫の出生の秘密を話して、きっと姫たちも知っているはずと勘違いした薫は、なんとしても大君を自分のものにしようと思う気持ちが芽生えるが、すぐに行動を起こすようなことはない。姫君ふたりは一緒にその日その日を暮らし、薫と匂宮から、折々まめに手紙が来る穏やかな日々が続く。夏のある日、突然宇治を訪ねた薫は、ふたりながらに美しい姫君を覗き見する。薫23歳から24歳ごろ。

八の宮の一周忌が近づく頃、姫たちの寂しい日々は続く『総角(あげまき)』の帖。宇治を訪れた薫が大君へ結婚したい気持ちを伝えるが、独身を貫きたい大君は取り合わない。また、匂宮の中の宮への思いも伝えるが、浮気の一つとして大君はよい返事をしないが、中の君を薫と結婚させたいと思っている。大君と話し込んだある夜、薫は気持ちを抑え難く、御簾の中に入るが、そんな態度を恨み、大君と薫は結ばれることなく夜を過ごす。また、女房の手引きで姉妹の寝所に忍び込むが、大君は逃れ、中の君ともまた結ばれることなく朝を迎える。そんな大君の強情さに業を煮やし、匂宮を手引きして中の宮と結べば、大君が自分の方をむいてくれるのではと、薫はふたりを結びつける。匂宮は、三日間は何とか通うことができ、中の宮も馴染む。しかし匂宮は母の明石の中宮に見咎められ、それ以後通うことがかなわない。姉の大君は、このまま妹が捨てられるのではないかと、薫を恨み、心配のあまり病の床につく。宇治へと心がはやる匂宮は宮中に住まわせられることになり、気ままな外出が敵わず、夕霧の娘六の宮との縁談がすすめられていく。大君は中の宮と薫を結婚させた自分を責め、いっそう衰弱していく。宇治へ見舞いに行った薫は、大君の衰弱ぶりに驚き、看病のために滞在する。このとき、初めて大君は心を緩め親しく話すようになるが、ついに亡くなってしまう。その後も、薫は宇治に留まり、京に帰ろうとしない。匂宮がようやく弔問に訪れたが、中の君は会おうとしなかった。匂宮の嘆きを知り、母の明石の中宮から、中の君を京に迎えても良いと許しが出る。薫24歳、匂宮25歳、大君26歳、中の君24歳ごろ。

 

 

源氏物語 巻七

f:id:purpleprincess3:20200614134057j:plain


「女三の宮との件以外には源氏に対して過ちがないのだから、死んでしまったら哀れんでくださるのではないか」と悩み続ける『柏木』が、ついに命を落とす帖。女三の宮は男君を産むが体調は優れない。源氏は「今度のことは自分(と藤壺)の秘密の罪業の報い」と思い、人前ではとりつくろうが生まれたばかりの若君を格別見ようともしない。女三の宮は源氏のよそよそしさに気づき、出家したいと望む。一方、朱雀院は娘の宮が病気だと知っていてもたってもいられず、山を降り見舞い、願いを聞き入れ出家を助ける。柏木は親友の夕霧に「源氏と行き違いがあって病みついた。鋭い目つきで睨まれて、さらに悪くなったが、どうか源氏に釈明してほしい」と、遺言を残し亡くなる。残された若君はすくすくと育ち、源氏は「柏木に似ている」と密かに思い、尼となった宮に時々皮肉を言うことも(怖)。

笛が上手だった柏木が式部卿の宮から賜った『横笛』を、柏木の母君から託された夕霧が源氏を訪ねる帖。源氏は、すくすくと美しく育つ若君を見て「気高く、重々しく、常人とは違う」のは、自分に似ているのではないか、と思い(凄っ!)可愛がるようになる。横笛は、若君に伝えようと源氏が受け取る。夕霧は雲居の雁との間に多くの子を持ち、賑やかに暮らしている。親友だった柏木と女三の宮の間にあったことをうすうす感じてはいるが、源氏に確かめることはできずにいる。

『鈴虫』の帖。女三の尼宮の作った仏様の開眼供養が行われ、朱雀院は尼宮を自分が譲った実家、三条の宮に移したいと望むが源氏は自分の住まいである六条の院から移そうとしない。秋の虫を放った六条の院で鈴虫の宴が行われた日、冷泉院からお招きが来る。お年とともに冷泉院は源氏とますますそっくりに立派になっている。秋好む中宮もまた、母六条の御息所が罪障深く苦しみ、今も物の怪になって現れているという噂を耳にして、出家したいと願っているが、これも源氏は許さない。

親友柏木の北の方であった女二の宮への『夕霧』の届かない恋心を描く帖。品行方正で堅物、雲居の雁との間には8人のお子をなし円満に暮らしていたが、柏木の遺言にしたがって、女二の宮のお世話をするうちに、恋心を募らせるようになる。女二の宮の母、御息所が病に伏した際、お見舞いにかこつけて想いを告げるが女二の宮は拒む。ある日、隙を見つけて御簾の中へするりと入り込む。宮は強く抵抗して操を守るが、母御息所の耳には届き、病がこじれ亡くなってしまう。夕霧は悲しみに沈む女三の宮を何度も見舞うが、冷たくあしらわれる。どうしても想いを聞き入れてもらえないことがわかって、「御息所が承知の上の間柄だったのだと人には言っておこう」と嘘をつき、女二の宮が知らないうちに婚礼を決めてしまうが、宮は夕霧を決してそばに寄せつけようとしない。夕霧の北の方、雲居の雁は嘆いて、里に帰ってしまう。

紫の上が病の床で亡くなられるまでを描いた『御法』の帖。長年に渡って書かせていた法華経千部を供養する法会の日、明石の君、花散里、明石の中宮や、孫にあたる三の宮など親しかった人たちと言葉を交わす。「痩せ細っていらっしゃるが、高貴で優雅な限りないお美しさ」に輝いているが、明石の中宮と面会中ついに息絶える。源氏の悲嘆は限りなく、葬儀の日、足元もおぼつかず、人に寄りかかってやっとたっているほど。今日こそは、今日こそは出家しようと思いつつ、月日が過ぎていく。

紫の上が亡くなり、源氏の悲しみに溢れた1年を描いた『幻』の帖。年明け、年賀に訪れる人にもあわず、気のおけない女房たちと思い出話にふけって日を送る。女三の尼宮や、明石の君、花散里など女君を訪ねてもお泊まりをすることもなく、ひとり寝を続ける。夕霧や孫たちとの交流に気持ちを紛らわせながら紫の上をしのび月日を送り、年末、紫の上の手紙を焼き、最後に人前に輝かしく美しい姿を見せて、出家に至る。源氏52歳。

『雲隠』はタイトルのみで本文はない。源氏亡き後の登場人物の生活を説明した次の『匂宮』までの間に8年間の空白がある。訳者である瀬戸内寂聴さんは、「紫式部は源氏の死を描くつもりはなかったのだと思う」と、解説しているが私も同感。解説によると「源氏は出家後、嵯峨に隠棲して、2〜3年後に死んだ」という。

源氏が亡くなって後、「あの輝かしいお姿や世評の栄光を受け継いだ方」はいない、としながらも、帝と明石の中宮の間に生まれた三の宮と、女三の尼宮の若君がそれぞれ美しいと評判となっている。三の宮は元服して兵部卿の宮となる。女三の尼宮の若君は冷泉院がとりわけ大切に後見されて元服を果たすと14歳で侍従となり、右近の中将に昇進して早々と1人前に。帝や夕霧もたいそう気を使ってお世話する。本人は自分の出生の秘密(源氏ではなく柏木と女三の尼宮の不倫の子)をうすうす感じていて、憂いのある人柄となる。この中将は生まれながら備わった人を魅了する芳しい体臭があり、「薫る中将」とあだ名される。何かと比較されることでライバル心を持つことになった兵部卿の宮は、いろいろ優れた名香を焚きしめ、熱心に香の調合をするなどして「匂う兵部卿」と呼ばれる。薫中将は出生の秘密について屈託があり、気まぐれな浮いた色事には気持ちが進まない老成した性質に。匂宮は華やかに女性との噂が絶えないが、特にこの人と心にかける方はいない。このように、源氏亡き後の登場人物のその後を描いたのが『匂宮』の帖である。

『紅梅』の帖は、亡き柏木の弟、按察使大納言一家の話。大納言は中の君を匂宮と結婚させたいと気を引こうとするが、匂宮は真木柱の連れ子の宮の姫君に関心があり、乗り気にならない。また、好色な匂宮は宇治の八の宮の姫君にもご執心だ。

 

 

 

源氏物語 巻六

f:id:purpleprincess3:20200614134139j:plain


『若菜』上は、体調がすぐれない朱雀院が、出家を望みながらも子である女三の宮の行く末を心配する嘆きから始まる。まだ十三歳ほどの姫には、しっかりした後ろ盾となってくれそうな男と結婚させたいと望み、蛍兵部の卿の宮、夕霧、柏木に加え、1番の候補にあげるのがなんと四十前の源氏。申込みを受けた源氏は全くその気がないが、随分迷っての上でのお申込と聞いて、また、あの藤壺の女御の娘であることを改めて思いおこし御器量も良いのではと関心を持つことに(相変わらず好色!)。女三の宮の裳着の式(成人式)をすませ、朱雀院は出家して、そのご挨拶に出向いた源氏にさらに結婚を願いでて、ついに承服することになる。「しっくりと睦まじい仲」になっている紫の上が気がかりだが、「たとえどんな事があっても、私の愛情は変わらない。けれどもあちら(女三の宮)の対面を傷つけないようにお世話はする。だから仲良く暮らしてほしい」と、言い聞かせる。女三の宮がお輿入れとなり、内心は波立っているが、紫の上はさりげない様子を装いながら細々と姫の世話をする。お輿入れから三日間は女三宮に通うのが決まりだが(!)長年こんな経験をしていなかった紫の上は、悩みを隠せない。周りの女房たちに心配されていることに気づき、いっそう平静を装うことに心を砕く(しんどいねぇ)。お輿入れした女三の宮はまだまだあどけなく頼りなく、源氏は紫の上の素晴らしさに改めて気づく。

明石の女御が懐妊して六条の院へとお里下りのご挨拶をきっかけに、紫の上は女三の宮と対面し、親しく付き合う仲になる。明石の女御は無事に若宮を出産、明石の入道は念願を叶えたとして、山奥へと隠遁する。三月のある日、源氏は夕霧や柏木を六条の院に招いて、蹴鞠をさせて楽しむ。その際、柏木が女三の宮を垣間見てしまう。自分も花婿候補だったと知っている柏木は女三の宮に並々ならない気持ちを持っていたが、その恋心に火がついてしまう。何とかしてまた会いたいと、姫のおそばに使える小侍従に手紙を託す。

『若菜』下は、女三の宮から思うような返事をもらえないことに業を煮やす柏木が想いを膨らませているところから始まり、不穏な空気を感じる。彼女の姿を垣間見るきっかけを作った飼い猫を手に入れ、近づけない苛立ちを解消するために夜も添い寝して可愛がる姿は哀しく滑稽にもうつる。玉鬘の君の夫、髭黒の大将の北の方との間に生まれた真木柱を柏木にという意向もあったが、女三の宮に夢中な柏木には届かず、蛍兵部卿の宮と結ばれることになるが、宮には故北の方への思いが残っており夫婦仲は良好とは言えない。

紫の上は、源氏が女三の宮の降嫁を受け入れたことで、源氏とともに暮らす落ち着いた老後への望みもはかなく感じられるようになり、幾度となく出家を申し出る。源氏は「私を見捨てないでほしい」と、その望みを叶えようとしない。しかし、女三の宮の父朱雀院の手前もあり、紫の上と女三の宮のもとに通う割合は次第に等分になっていく。女三の宮に会いたいという朱雀院のために、お引き合わせするきっかけとして院の『五十の賀』(50歳の祝い)を計画する。その祝いの席で女三の宮の琴の上達ぶりを院に聞かせてあげたいと、源氏は熱心に指導する。その演奏を女性だけで行う女楽にしようと思い立ち、予行演習を行う。その夜、紫の上と寝物語に関わりのあったいろいろな女性への想いを話す。その翌日から紫の上は発病して二月伏せることになり、二条の院へと移して源氏はつきっきりの看病をする。源氏が六条の院にいないことを推量して、柏木は小侍従に姫のもとへ手引きを懇願。柏木は宮のもとに忍ぶことができ、ついに想いを遂げることとなる。しかし、柏木はその後自分のしたことの恐ろしさと恥ずかしさで、ノイローゼのようになり閉じこもってしまう。

体調を崩した女三の宮のもとを訪ねた源氏に、紫の上の病状が悪化したという知らせが届く。ご祈祷を重ねると「わたしのことをひねくれて嫌な女だと、愛する人との睦言のついでに言われたのが恨めしい」と、六条の御息所そっくりの物の怪が姿を現した。ご祈祷の甲斐もあり、回復する兆しも見られたが、源氏は紫の上のおそばを離れることはない。

そうかといって女三の宮を放っておくこともできず、源氏は六条の院へ。そして、女三の宮の懐妊を知る。源氏の訪れを嫉妬した柏木が手紙を託すが、宮がその手紙を隠し損ねて源氏に二人の間柄を知られる。「不倫の恋の結果が、あのご懐妊ということか。情けないこと」とは思うが、「亡き桐壺院も(自分と)藤壺との密通を承知しながら知らない振りをしていたのではないか」と、深い悩みに陥る。源氏はかわいそうな宮への愛おしさはあるが、夫婦としての愛情はなく、心は離れてしまう。

朱雀院の五十の賀の舞台の稽古に、源氏は柏木を招待する。その宴席で「だらしなく酔い泣きする歳をとった私を笑うけれど、あなたの若さも今しばらくのこと。老いは逃れられられない」と、皮肉を言いじっと見据える。(恐ろしい)宴席から逃げ帰った柏木は病に伏す。朱雀院五十の賀が迫る年の暮れ、源氏は47歳となった。

源氏物語 巻五

f:id:purpleprincess3:20200614134217j:plain


『蛍』の帖、源氏はまだまだ玉鬘の君への思いを諦めきれない。その上、姫に思いを寄せて文を送る男性たちへの返事も書きなさいと進め、さらに姫の気持ちは波立つ。兵部の卿の宮がお訪ねの時に源氏は玉鬘のご几帳の中に蛍を放ち、姫の美しい顔を脳裏に刻ませることでさらに恋しい気持ちを掻き立てる。

花散里とは寝所は別となっているが、お話し相手としては最高の相性になっている。

長梅雨に、女君たちは絵物語を退屈しのぎに楽しんでいる。紫式部はここで源氏の君に物物語論を語らせる。「この世に生きている人の有り様の、後世にも言い伝えさせたい事柄を書き残したのが物語の始まり。全く嘘だというのも、物語の本質を間違えてしまう」。

内大臣(頭の中将)は多くの子がいるが、姫は少なく、しかも思い通りに運ばないことを嘆いていた。それにつけても気がかりなのは夕顔の君との間の子、(玉鬘の君)。あの姫はどこにいるのだろうと、気を揉んでいる。

『常夏』では、源氏は内大臣が落としだねの姫(近江の君)を引き取った噂を聞く。その姫は、玉鬘の君とはまるで違う、早口で田舎者だった。源氏の玉鬘への気持ちは変わらないが、辛くも思いとどまっている。内大臣は自分の姫、雲居の雁も玉鬘の君のように男たちをヤキモキさせたかったと悔しく思うが、いつかは夕霧の中将と夫婦にと、心中では思っている。

近江の君は内大臣に出仕させられて、嘲弄に晒されている。玉鬘の君は実父ではなく源氏に引き取られて幸運だったと思う。源氏はますます姫のお部屋に入り浸るようになるが、男女の関係には至らない。柏木の頭の中将は実の姉とは知らず、恋心を抱いている。

例年よりも荒々しい『野分』が吹き荒れた秋、夕霧の中将は紫の上のお顔を初めて垣間見て、恋心を抱く。いつも恋しく思い続ける雲居の雁を差し置いて、紫の上の面影が忘れられない自分に驚く。その気持ちに源氏は薄々気づく。また、玉鬘の君と父源氏の色めいた様子を偶然目にしてしまう。さらに、美しく成長した明石の姫君も垣間見る。「こんな美しい人々を想いのままに明け暮れ拝見していたい」と思い、親や姉妹なのに源氏が近づけてくれないことを恨む気持ちが芽生える。

源氏は玉鬘の姫君の将来を考えて、宮仕えを勧めている。その年の12月、冷泉帝の『行幸』があり、六条の院からも女君たちが揃って見物に出かける。玉鬘の姫君は実の父、内大臣の姿を探すが、帝の優れたお姿に心を奪われる。年が明け、源氏は、女性が成人したことを世間に知らす「御裳着の儀」の時に、玉鬘の君と内大臣を親娘として引き合わせるのが一番と画策する。内大臣は源氏が息子の夕霧と自分の娘雲居の雁の結婚について相談されると勘違いしていたが、玉鬘の君のことを打ち明けられて驚き、喜ぶ。恋心を寄せていた柏木の中将は、辛いけども美しい姉ができたことに喜ぶ。

藤袴』では、多くの方から宮仕えを勧められる玉鬘の君の物語。実の父内大臣に認知されてからは、源氏はさらに馴れ馴れしくなっていて、さらに夕霧の中将も思いを打ち明けるが、ただただ困ったことと受け止める。夕霧の中将は「内大臣に姫を押しつけ、宮仕えをさせたあと、自分のものにしよう」という企みだという噂を源氏に確かめる。その噂を表面では否定しつつも、「恐ろしくも見抜かれてしまった」と独言(恐)。いよいよ宮仕えに出る日が迫り、熱心な求婚者の髭黒の大将と蛍兵部卿の宮をはじめ、いろいろの方々が失恋を恨む手紙が相次ぐのだった。

『真木柱』では、玉鬘の君が女房の手引きで髭黒の大将と結ばれる。源氏は悔しい気持ちを押しとどめて、格別立派な婚礼をあげ、大将を丁重に婿として扱う。冷泉帝も出仕を前の突然の縁組に残念なお気持ちに。一方、髭黒の大将は有頂天になる。というのも、大将の北の方はもともと器量もよく人柄も良いのだが、物の怪に取り憑かれて正気を失う事がある。玉鬘の君へと愛情が移ることをかわいそうに思い、北の方の父親はお里帰りを勧めるが、お子もいる間柄なので髭黒の大将はよしとしない。けれども日が暮れると玉鬘の元へ気もそぞろになり、香を焚きしめて出かける準備を始める。北の方はその香炉の灰を大将に浴びせかけ、物の怪に取り憑かれ大声で喚き罵りはじめる。大将は、玉鬘の君の元へと急ぎ、長逗留する。北の方は別れる決心をして、姫君を連れて実家に帰る。この北の方は紫の上とは異母姉。玉鬘は、自分のために起こった事件を迷惑としか思わず、もともと嫌だった髭黒の大将との結婚にさらに嫌気がさす。そして源氏がいかに優雅で深い愛情を持って接してくれたかを知ることとなる。しかし、なんと髭黒の大将との間に男児を産む。

今年11歳になる明石の姫君の裳着の儀式が予定されていて、その後東宮の妃として入内することも決まっていた。入内の支度に当てる名香を作るため、源氏は薫物合わせを思いたつ。源氏はもちろん、紫の上、朝顔、花散里、明石の君など、皆が競って調合した薫物を兵部卿の宮が判定するが、どなたにも花を待たせる。また、お道具の一つ、草子箱に治める歌集も、源氏自ら、また兵部卿の宮、あちらこちらの女君にも書いていただくなど、趣向を凝らしたお支度となる。この『梅枝』の帖は、源氏の香道論、書道論が展開され、多彩な一面を紹介している。内大臣は明石の姫君の入内を見るにつけ、自分の娘雲居の雁と夕霧との進展がないことを嘆く。夕霧の雲居の雁への気持ちは変わらないが、『六位風情』と侮った乳人に対して、せめて中納言に昇進して姿を見せたいという意地があり、なかなか折れない。

雲居の雁の姫君が恋しくてならず、物思いに沈みがちな夕霧の中将のお姿からら始まる『藤裏葉』の帖。内大臣が許してくれそうだという噂も聞こえてきているのに、意地をはっている。ついに内大臣が折れて、「私の罪はもう許してくださいよ」と話しかけ、庭先の藤見の音楽会へと夕霧を誘う『藤裏葉』の帖。その日の宴会で酔い潰れた振りをして内大臣の屋敷に泊まり、雲居の雁とついに結ばれる。「長年の恋の積もる思いも加わって、水も漏らさぬ睦まじさ」へと。他の女に心を移さず姫君ひとりを守り通した夕霧は、源氏の息子とは思えない実直さです(笑)。明石の君は入内して、紫の上がつきそうが、3日間宮中で一緒に過ごした後は、実の母である明石の君に付き添いを交代することとする。その時、初めて明石の君と紫の上が対面するが、お互いの素晴らしさを認め合い、打ち解けることになる。翌年、源氏は40歳を迎え、朝廷を挙げてのお祝いが催される。夕霧の宰相はついに中納言へと昇進し、夫婦が幼い恋を育んだ三条殿へと住まいを移す。晩秋の頃、源氏の住まいである六条の院に帝と朱雀院が行幸、雅な宴が催される。

 

 

 

源氏物語 巻四

f:id:purpleprincess3:20200614134301j:plain


大堰川のほとりに住居を構え姫と暮らす明石の君に、源氏は姫君を自分の元に引き取って、正妻紫の上の子として育てたいと申し出る『薄雲』の帖。。(なんと、残酷な。。子を取り上げて正妻に育てさせるというのだ)明石の君は、悩みながらも、源氏に従うことが姫の将来のためと、泣く泣く別れを決める。その頃、太政大臣、さらに藤壺も続けて亡くなる。嘆き悲しむ帝を心配して、昔から交流のあった僧をそば近くに逗留させたことから、藤壺と源氏の秘密を帝が知ることに。源氏に帝の位を譲って、自分は譲位したいなどとも漏らすようになる。

我が子を産めない紫の上は明石の君の姫君をこの上なく可愛がる。
従姉妹にあたる『朝顔』の姫宮は、源氏が若き日から思いを寄せる女性。源氏が度々手紙を送っても、心を許しきらない返事をする賢さだが、思い通りにならない恋に打ち込んでしまうという性癖の源氏を惹きつけてしまい、紫の上に噂が耳に入るほどの執心となる。(呆)朝顔は決して源氏を受け入れようとはしない。
ご無沙汰の夜が続き、涙にくれる紫の上に、朝顔の姫宮を初め、藤壺、朧月夜や花散里、明石の君など、愛人たちの話をするのだ。。。
そんなある日、藤壺が夢に現れ、二人の秘密が帝に伝わったことへの恨み言を伝える。
『乙女』では、源氏と故葵の上の子、夕霧の若君と内大臣(頭の中将)の姫(雲居の雁の姫君)との幼い恋が描かれるが、いつかは姫を入内させようと考えていた内大臣に阻まれる。夕霧は源氏の思いもあって、六位という低い官位しか与えられておらず、「結婚相手が六位風情ではねぇ」という噂話を耳にして悔しがる。その後、従五位に昇進するも、内大臣の監視に阻まれ、雲井の雁との進展はない。そんな中、源氏は紫の上の父式部卿の宮の50歳の祝いを行うにあたり、お屋敷を新築して明石の君も呼び寄せる。梅壺の中宮、花散里、明石の君、紫の上と、それぞれに似合う四季の庭を作り、渡り廊下で結び行き来するように配慮している。
『玉鬘』は、今も源氏の心に残る夕顔の忘れ形見の姫(玉鬘の君・父親は頭の中将)の後日譚。夕顔に支えていた女房の右近は現在、紫の上のおそばにいる。当時、姫は乳母の元に残され、乳母の夫の赴任先筑紫へと伴われます。乳母の夫は早くに亡くなり、子どもたちに姫を京へ連れて行ってほしいと遺言します。二十歳ほどになった姫は、「田舎には惜しいほどの、この上なく素晴らしいお見事な」姫君に育ち、様々な男性からの求婚をうける。乳母は家族を伴って京都へとのぼり、石清水八幡宮参りの際に右近と再会、頭の中将には知らせず、自分に先にと予々言われていたので、まず源氏に知らせます。そして、源氏は花散里に後見を頼み六条の院に住まわせることとなる。源氏が「世間に知らせて、色好みの連中が、ひどく真面目くさった顔つきでこの屋敷にやってくるのを見てやろう」と思うほどの魅力的な姫となっていました。
『初音』では、六条の院で、多くの姫と暮らす源氏の新年を描く。紫の上との仲睦まじさ、花散里との落ち着いた間柄、明石の君への変わらない思い。「几帳を引き直して赤々としたお鼻が見えないように隔てる」けれども、末摘花へも気配りを忘れません。空蝉もいつしかこちらに移られたようです。愛する女性たちに会いたい時に会いに行き、経済的に庇護し続ける、男性の夢を実現したような暮らしです。。
『胡蝶』では子として面倒を見ている(実は頭の中将と夕顔の君の娘)玉鬘への恋心を抑えきれない源氏の姿が描かれる。美しい姫には多くの男性が心を寄せ、その中に頭の中将の子、柏木も名を連ねる(実のきょうだい)。源氏は、ある日衣服を脱いで玉鬘に添い寝をするに至る(驚)が、思いを遂げることにはならず、姫は思い悩む。。
源氏36歳。どこまでも、難儀な(笑)男性である。。