源氏物語 巻六

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『若菜』上は、体調がすぐれない朱雀院が、出家を望みながらも子である女三の宮の行く末を心配する嘆きから始まる。まだ十三歳ほどの姫には、しっかりした後ろ盾となってくれそうな男と結婚させたいと望み、蛍兵部の卿の宮、夕霧、柏木に加え、1番の候補にあげるのがなんと四十前の源氏。申込みを受けた源氏は全くその気がないが、随分迷っての上でのお申込と聞いて、また、あの藤壺の女御の娘であることを改めて思いおこし御器量も良いのではと関心を持つことに(相変わらず好色!)。女三の宮の裳着の式(成人式)をすませ、朱雀院は出家して、そのご挨拶に出向いた源氏にさらに結婚を願いでて、ついに承服することになる。「しっくりと睦まじい仲」になっている紫の上が気がかりだが、「たとえどんな事があっても、私の愛情は変わらない。けれどもあちら(女三の宮)の対面を傷つけないようにお世話はする。だから仲良く暮らしてほしい」と、言い聞かせる。女三の宮がお輿入れとなり、内心は波立っているが、紫の上はさりげない様子を装いながら細々と姫の世話をする。お輿入れから三日間は女三宮に通うのが決まりだが(!)長年こんな経験をしていなかった紫の上は、悩みを隠せない。周りの女房たちに心配されていることに気づき、いっそう平静を装うことに心を砕く(しんどいねぇ)。お輿入れした女三の宮はまだまだあどけなく頼りなく、源氏は紫の上の素晴らしさに改めて気づく。

明石の女御が懐妊して六条の院へとお里下りのご挨拶をきっかけに、紫の上は女三の宮と対面し、親しく付き合う仲になる。明石の女御は無事に若宮を出産、明石の入道は念願を叶えたとして、山奥へと隠遁する。三月のある日、源氏は夕霧や柏木を六条の院に招いて、蹴鞠をさせて楽しむ。その際、柏木が女三の宮を垣間見てしまう。自分も花婿候補だったと知っている柏木は女三の宮に並々ならない気持ちを持っていたが、その恋心に火がついてしまう。何とかしてまた会いたいと、姫のおそばに使える小侍従に手紙を託す。

『若菜』下は、女三の宮から思うような返事をもらえないことに業を煮やす柏木が想いを膨らませているところから始まり、不穏な空気を感じる。彼女の姿を垣間見るきっかけを作った飼い猫を手に入れ、近づけない苛立ちを解消するために夜も添い寝して可愛がる姿は哀しく滑稽にもうつる。玉鬘の君の夫、髭黒の大将の北の方との間に生まれた真木柱を柏木にという意向もあったが、女三の宮に夢中な柏木には届かず、蛍兵部卿の宮と結ばれることになるが、宮には故北の方への思いが残っており夫婦仲は良好とは言えない。

紫の上は、源氏が女三の宮の降嫁を受け入れたことで、源氏とともに暮らす落ち着いた老後への望みもはかなく感じられるようになり、幾度となく出家を申し出る。源氏は「私を見捨てないでほしい」と、その望みを叶えようとしない。しかし、女三の宮の父朱雀院の手前もあり、紫の上と女三の宮のもとに通う割合は次第に等分になっていく。女三の宮に会いたいという朱雀院のために、お引き合わせするきっかけとして院の『五十の賀』(50歳の祝い)を計画する。その祝いの席で女三の宮の琴の上達ぶりを院に聞かせてあげたいと、源氏は熱心に指導する。その演奏を女性だけで行う女楽にしようと思い立ち、予行演習を行う。その夜、紫の上と寝物語に関わりのあったいろいろな女性への想いを話す。その翌日から紫の上は発病して二月伏せることになり、二条の院へと移して源氏はつきっきりの看病をする。源氏が六条の院にいないことを推量して、柏木は小侍従に姫のもとへ手引きを懇願。柏木は宮のもとに忍ぶことができ、ついに想いを遂げることとなる。しかし、柏木はその後自分のしたことの恐ろしさと恥ずかしさで、ノイローゼのようになり閉じこもってしまう。

体調を崩した女三の宮のもとを訪ねた源氏に、紫の上の病状が悪化したという知らせが届く。ご祈祷を重ねると「わたしのことをひねくれて嫌な女だと、愛する人との睦言のついでに言われたのが恨めしい」と、六条の御息所そっくりの物の怪が姿を現した。ご祈祷の甲斐もあり、回復する兆しも見られたが、源氏は紫の上のおそばを離れることはない。

そうかといって女三の宮を放っておくこともできず、源氏は六条の院へ。そして、女三の宮の懐妊を知る。源氏の訪れを嫉妬した柏木が手紙を託すが、宮がその手紙を隠し損ねて源氏に二人の間柄を知られる。「不倫の恋の結果が、あのご懐妊ということか。情けないこと」とは思うが、「亡き桐壺院も(自分と)藤壺との密通を承知しながら知らない振りをしていたのではないか」と、深い悩みに陥る。源氏はかわいそうな宮への愛おしさはあるが、夫婦としての愛情はなく、心は離れてしまう。

朱雀院の五十の賀の舞台の稽古に、源氏は柏木を招待する。その宴席で「だらしなく酔い泣きする歳をとった私を笑うけれど、あなたの若さも今しばらくのこと。老いは逃れられられない」と、皮肉を言いじっと見据える。(恐ろしい)宴席から逃げ帰った柏木は病に伏す。朱雀院五十の賀が迫る年の暮れ、源氏は47歳となった。