源氏物語 巻八

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『竹河』の帖は、亡くなった髭黒の大臣の一家の物語。髭黒の大臣の未亡人となった玉鬘は3人の息子と2人の姫を育てている。長女の大君は帝と冷泉院のどちらからも所望されていて、夕霧の息子の蔵人の少将もご執心だ。しかし、息子たちの友人として遊びに来る薫を、婿にしたいと思っている。三月、大君と中の君、二人の姫が碁をうつ姿を蔵人の少将が覗き見して、美しい大君にますます恋心を掻き立てられる。だが、大君はたっての申し出もあり冷泉院に嫁ぐ。蔵人の少将は嘆き悲しむ。冷泉院に上った大君は寵愛され、姫に続き男君を産むが、院には秋好む中宮や弘徽殿の女御などが先にいて、大君の苦労は絶えない。薫23歳ごろまで。

『橋姫』の帖。同じ頃、須磨から源氏が復帰後、不遇の日を送っていた源氏と異腹の弟君、八の宮は宇治で暮らしていた。宮の北の方は可愛らしい姫を二人産んで先に亡くなる。姉の大君は奥ゆかしく高貴なお姿で、妹君の中の宮は空恐ろしいほど美しく育つ。もともと出家を願っていた八の宮は明け暮れ勤行に励み、近所に住む阿闍梨に経典を学びながら姫二人を育てる。この阿闍梨は冷泉院にもお経を教える人で、八の宮の噂が薫の耳にも届く。薫は八の宮にぜひ一度会いたいと手紙を託し、やりとりが始まり、宇治へと出かけ、経典の学びを通して交流が深まっていく。あるとき、姫君たちの音楽に誘われて、そば近くへ来たときお顔を垣間見る。そのとき薫の応対に出た年寄りの女房が、実は柏木の乳母だった。その女房から薫は自分の出生の秘密を知ることとなるが、母宮、女三の尼宮には自分がそれを知ったことを打ち明けることができない。一方、八の宮に二人の姫の行末を案じていることを告げられた薫は、「命ある限り姫たちのお世話をします」と後見役になることを誓う。薫20歳から22歳ごろ。

『椎本(しいがもと)』の帖では、かねがね姫たちの噂を聞き及んでいた匂宮が薫と一緒に宇治のお屋敷近くに逗留する。八の宮は薫を招き、匂宮は姫と手紙をかわすようになる。その後しばらくぶりに訪ねた薫に「死後は姫たちの面倒を見て欲しい」と八の宮は重ねて託す。「世間の男にありがちな露骨な恋心を見せない」薫の出す手紙に、姫君たちは時たま返事を書く。秋が深まり死の予感を持ちながら八の宮は勤行のため山寺に入り、姫のもとに帰ることなく亡くなる。姫たちの嘆きは言うに及ばず、薫もまさか本当に亡くなるとは思っていなかったため、残念な気持ちがこの上もない。喪が開けて見舞いにきた薫に言葉少なに姉の大君が応対をするがその奥ゆかしさに改めて心を捉えられる。女房が薫の出生の秘密を話して、きっと姫たちも知っているはずと勘違いした薫は、なんとしても大君を自分のものにしようと思う気持ちが芽生えるが、すぐに行動を起こすようなことはない。姫君ふたりは一緒にその日その日を暮らし、薫と匂宮から、折々まめに手紙が来る穏やかな日々が続く。夏のある日、突然宇治を訪ねた薫は、ふたりながらに美しい姫君を覗き見する。薫23歳から24歳ごろ。

八の宮の一周忌が近づく頃、姫たちの寂しい日々は続く『総角(あげまき)』の帖。宇治を訪れた薫が大君へ結婚したい気持ちを伝えるが、独身を貫きたい大君は取り合わない。また、匂宮の中の宮への思いも伝えるが、浮気の一つとして大君はよい返事をしないが、中の君を薫と結婚させたいと思っている。大君と話し込んだある夜、薫は気持ちを抑え難く、御簾の中に入るが、そんな態度を恨み、大君と薫は結ばれることなく夜を過ごす。また、女房の手引きで姉妹の寝所に忍び込むが、大君は逃れ、中の君ともまた結ばれることなく朝を迎える。そんな大君の強情さに業を煮やし、匂宮を手引きして中の宮と結べば、大君が自分の方をむいてくれるのではと、薫はふたりを結びつける。匂宮は、三日間は何とか通うことができ、中の宮も馴染む。しかし匂宮は母の明石の中宮に見咎められ、それ以後通うことがかなわない。姉の大君は、このまま妹が捨てられるのではないかと、薫を恨み、心配のあまり病の床につく。宇治へと心がはやる匂宮は宮中に住まわせられることになり、気ままな外出が敵わず、夕霧の娘六の宮との縁談がすすめられていく。大君は中の宮と薫を結婚させた自分を責め、いっそう衰弱していく。宇治へ見舞いに行った薫は、大君の衰弱ぶりに驚き、看病のために滞在する。このとき、初めて大君は心を緩め親しく話すようになるが、ついに亡くなってしまう。その後も、薫は宇治に留まり、京に帰ろうとしない。匂宮がようやく弔問に訪れたが、中の君は会おうとしなかった。匂宮の嘆きを知り、母の明石の中宮から、中の君を京に迎えても良いと許しが出る。薫24歳、匂宮25歳、大君26歳、中の君24歳ごろ。